『宮本から君へ』感想

この感情がすごい2019(弊社調べ)にノミネートされました。おめでとうございます。(何様)

 

miyamotomovie.jp


こんなに感情を揺さぶられたのは『天気の子』ぶり………まで考えて「そらそうよだって同じ系譜だもん」と気付く。


「カルキ抜かねえと金魚死ぬぞ。女殺し」

序盤にユウジが吐き捨てたこの一言が宮本と靖子に向けるべき視線を決定付けてくれた。

2019年はなにかと"水道水では生きていけない話"に巡り会う気がするね。『天気の子』しかり『さらざんまい』しかり。きっと時代の気分なんだろうな。そう考えるとほんのり嬉しい気持ちになる。


演者のみなみなさまのギラつくほどの怪演も出色。蒼井優さん、ものすげえ役者だ………

HIGH&LOWが大好きなので一ノ瀬ワタルさんと井浦新さんの登場も◎

というか一ノ瀬さんが無茶苦茶な増量をやっていた理由はこれか。不遜で居丈高なラガーマン役、不気味なほど堂に入っていて背筋がゾッとした。学生時代にああいう人周りにいたんだよな………体育会系の人間のイヤ〜〜〜な部分が細密に再現され過ぎていてむしろ往時のトラウマを逆撫でされた感すら覚えてしまった………ストイックな体作りと演技力の賜物ですね。アッパレ。


原作とドラマ版も履修しようかな。ありあまる熱量で完全に絆されちゃった。向こうしばらくは会う人会う人に辻斬りめいたレコメンドを仕掛けそうだ。

『台風家族』感想

『台風家族』を観た。よかった。

taifu-kazoku.com

いわゆるB級映画に分類されるんだろうが、着飾らない感じが逆に鈴木一家の醸し出す生臭い雰囲気によく馴染んでいておもしろかった。


仮にも国民的アイドルをウン十年勤め上げた人間がこんなにしょっぱいコソ泥まがいの役を演じるのか…という驚きもあった。彼が演じる鈴木小鉄は仮にも妻子を持つ身でありながらこれといった定職に就くことも叶わない中年男性だ。とにかくお金に卑しく両親の遺産をなんとか一人占めしようと奇行を繰り返す小鉄を見て、なんとなく全裸事件を思い出した。


不謹慎で不謹慎を上塗りするようなブラックユーモアの数々に自主制作映画っぽいパッションを垣間見た気がする。向こう見ずでアクセル全開。葬式の合間にセックスをするな。あとそれをネット配信するんじゃない。


「最低がわかんない。沼だよ沼」というユズキ(小鉄の娘)のセリフにウッとなった。続発する小鉄の蛮行に耐えかねての一言。でもこの映画は満面の笑みを浮かべたユズキが「最低」と言い放つカットで締め括られる。今が底だ。がんばれユズキ。人間は這い上がるために落ちるのだとアルフレッドもそう言っている。


件の新井浩文氏が出演していることもありどの媒体も積極的には取り上げない本作。ド傑作や!!!と胸が熱くなるタイプの作品ではないけども、程よく笑えてなんとなく憎みきれないろくでなし一家のハートフル遺産相続バトル『台風家族』をよろしくな!ぼくは好き!