『台風家族』感想

『台風家族』を観た。よかった。

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いわゆるB級映画に分類されるんだろうが、着飾らない感じが逆に鈴木一家の醸し出す生臭い雰囲気によく馴染んでいておもしろかった。


仮にも国民的アイドルをウン十年勤め上げた人間がこんなにしょっぱいコソ泥まがいの役を演じるのか…という驚きもあった。彼が演じる鈴木小鉄は仮にも妻子を持つ身でありながらこれといった定職に就くことも叶わない中年男性だ。とにかくお金に卑しく両親の遺産をなんとか一人占めしようと奇行を繰り返す小鉄を見て、なんとなく全裸事件を思い出した。


不謹慎で不謹慎を上塗りするようなブラックユーモアの数々に自主制作映画っぽいパッションを垣間見た気がする。向こう見ずでアクセル全開。葬式の合間にセックスをするな。あとそれをネット配信するんじゃない。


「最低がわかんない。沼だよ沼」というユズキ(小鉄の娘)のセリフにウッとなった。続発する小鉄の蛮行に耐えかねての一言。でもこの映画は満面の笑みを浮かべたユズキが「最低」と言い放つカットで締め括られる。今が底だ。がんばれユズキ。人間は這い上がるために落ちるのだとアルフレッドもそう言っている。


件の新井浩文氏が出演していることもありどの媒体も積極的には取り上げない本作。ド傑作や!!!と胸が熱くなるタイプの作品ではないけども、程よく笑えてなんとなく憎みきれないろくでなし一家のハートフル遺産相続バトル『台風家族』をよろしくな!ぼくは好き!